NOVELS


プ リ ン
pudding 


 このお話は、ツイッターで拾った台詞を元に突発的に発生したパラレルNOVELです。

 ニルアレですが、裏にハレライなどいろいろ不埒な設定有。ご注意ください。


【設定】

パラレルで学園物。

ロックオン(ニール) 大学院生23歳

ライル        ロックオンの弟。大学院生。

アレルヤ       高校生 18歳

ハレルヤ       高校生 18歳

同じ学校の寮にいます。

アレルヤとハレルヤは双子。ロックオンはニールの通称。休学してた。

今はニールとアレルヤは付き合ってますが、その他いろいろとありそうです。


       


 ある日の午後。学生寮の大学院生の部屋のあるフロアは静かだ。

 足音を立てないように階段を上がって来た僕は、そっとドアを叩く。階段を上がり切ってすぐの部

屋。ロックオンの部屋。部屋の主は今日の午後は、退屈な教授の講義をさぼって自室でレポートを書

く予定のはず。忍んできたのは、人に知られたくないから。

「ロックオン」

 指先で、コツコツとすばやくノックする。扉が開いて、中に引き入れられる。

「かくまってください」

 僕が室内に飛び込むと、ロックオンはすばやく、音を立てずに扉を閉めた。

「?」

 カチリと室内から錠をおろすのと、大きな足音がするのが同時だった。武力介入でもしそうな勢い

の声がする。

「てめえ、出てこい! アレルヤ! アレルヤァァァ!」

 ドン、ドン、ドンと大きな音で、ドアが叩かれる。

 僕は黙って人差し指を唇にあてた。部屋の主は、にやっと笑って頷くと、そのままそこに立ってい

た。

「うるさいぞ。廊下でさわぐな。ハレルヤ・ハプティズム。ロックオン・ストラトスなら部屋にはい

ない。この時間は、グッドマン教授の講義のはずだ」

 廊下をはさんだ斜向かいから、ティエリア・アーデの鋭い声がした。

「ちっ。うるせえ、メガネ」と舌打つ声がして、乱暴に足音が遠ざかっていった。

「ふう」と、ロックオンと僕は同時に息を吐いた。

「どうした? ハレルヤと喧嘩でもしたのか」

「喧嘩ってわけでは・・・。ハレルヤは、頑固で融通がきかないんですよ」

「おやおや。それは、同属嫌悪ってやつか?」

 僕が軽く睨んでも、ロックオンは気にするふうもなく、すっと手を伸ばすと僕の額に指を触れた。

眉の間。皺が寄っていたみたいだ。

「なんでもねえよ。憂鬱そうな顔すんな。まあ、せっかく来たんだ。ゆっくりしていけ」

 長い腕が、伸びてくるのをするりとかわし、僕は、持ってきた紙袋を見せた。

「出て行きたい気持ちは、くすぶってるけどね。・・・ロックオン。プリン、食べませんか」

 コーヒーメーカーをセットして、ガラスの容器に入ったプリンを取り出す。保冷剤が一緒に入って

いるから、ひんやりとして冷たい。ビーカーのような形の容器に入ったそれは、淡いがねっとりとし

た黄色で、底のほうにカラメルソースが沈んでいる。ロックオンは甘いものが好きというわけではな

いけれど、午後のコーヒーのお伴にはよさそうだ。

「お前が、プリンなんて珍しいな。・・・いいけど、一個だけか」

「うん。限定販売で、ひとり二個までしか、買えなかったんだ」

 僕は、コーヒーカップとプリンをトレーに載せ、スプーンを持ってきて、ロックオンの隣に座った。

「おいしいって評判だから、あなたに食べてもらおうと思って」

「そうか。悪いな」

 ロックオンが、細い眉を下げた。

 ロックオンは、学内の女子に人気がある。すらりとした身体つき、栗色の髪に翡翠の瞳をしているだ

けでも憧れの対象として資格充分なのに、女性に優しくて、話題が豊富だから、慕われている。そのた

めの情報収集もよくしている。そんな彼のためにトピックを提供するのは、僕の密かな楽しみだ。

「いいのか。さっきのハレルヤは、このプリンを探しに来たんじゃないのか」

「大丈夫です。一個はハレルヤに置いてきました。これは、僕の分なんです」

 ハレルヤは甘い物が好きで、美味しい店の情報が豊富で早い。僕は、いつもハレルヤのご用達を信頼

している。

「そうか。うまそうだな。半分こしねえ?」

 ロックオンが優しく笑う。長い腕が、輪を作って僕を囲い込む。

「じゃ、もう一つお皿を持ってきます」

 僕は、ソファから腰を上げようとしたけど引き止められた。

「いやいや、そんなんいらないから。・・・アレルヤ、あーん」

 ロックオンは、プリンを大胆にすくい取ると、僕にむけて差し出して、形のよい唇を、ぱかっとOの

字に型に開けた。スプーンの上で、黄色がプルリと揺れた。

「え、僕が食べるの? それ恥ずかしいよ。子供みたいで」

「いいじゃねえか、ほかに誰もいないんだしさ。俺の手からじゃ嫌なのか?」

 綺麗な翡翠の瞳が細められて、優しく甘やかすように言われて、僕は頬が熱くなる。口元に、甘いカ

スタードの塊が押し付けられる。

「ほら、あーん」

「あーん。・・・・ん、んふ」

 弾力のある塊を僕の口に押し込むと、ロックオンはその後をおいかけて、自分の唇を押し付けてき

た。

 指先は僕の顎を捉えて、舌が奥まで入ってくる。ぐるりと僕の口の中を探る。とろりと崩れるプリン

の甘さとぬめりを舌に絡めるようにして、緩く吸い上げられた。息を奪われて、僕は軽く喘ぐと、ロッ

クオンの舌を吸ってしまう。それは柔らかくて、うねうねする。ふたりの舌に弄ばれて、プリンはすぐ

に溶けてしまい、甘い息ばかりが口の中に満ちた。

 ちゅ、と音をさせて唇が離れた。

「甘くて、うまいな」

「ん・・・もう、いきなりキスするなんて何、考えてるんですか!」

 僕は唇を指先で拭い、息をつきながら抗議する。ロックオンは唇をぺろりと舐めて、平然としてい

る。

「だって、半分って言ったろ。今度は、お前の番だぜ。俺に食べさせてくれよ」

「え。僕がするの?」

 ロックオンは、おねだりする子供みたいな顔をする。

 僕がスプーンでプリンを掬うと、ロックオンは、その手を押さえてプリンを僕の口元に押し付けた。

「スプーンなんかじゃなく。口移し・・・で、さ」

 僕は、顔をはなそうとするけど、手首を捕まれていて、うまくできない。

「いいだろ」

 ロックオンの眼を見るのが恥ずかしい。深い緑は、底が知れない。見ていたら、引きこまれてしま

う。引き込まれて、見透かされる。頬がひとりでに熱くなる。

「え。うまくできるかな。そんなこと」

「できるさ。大人のキス、好きだろ。プリンを口に入れて、俺に大人のキスしてみ?」

 空いた方の手が僕の首筋を掴んで、首の後ろを柔らかく揉む。温かい指先の感触に、背筋がぞくりと

する。こんなふうに誘われて、断れたためしがない。

 僕は、プリンを一口、口に含み、ロックオンに顔を寄せる。口を開くと、とろりと、卵色のプリンが

口の端から垂れそうになる。

 ロックオンは、僕の首を後ろに引くと、自分も唇を開けた。白い歯と赤い舌が見えて、一瞬僕は、ロ

ックオンに食われそうな気がした。

「アレルヤ。口あけろ」

 弾力のある舌が強引に入ってきて、口の中を探った。僕の舌で半分蕩けたプリンと唾液が、ズズっと

吸い出される。僕は反射的に舌を差し出してしまう。強く吸われて、弄ばれる。

 そっと、眼を開けて、ロックオンの顔を盗み見た。形の良い眉を少し顰めている。夢でも見ているよ

うな、優しい顔。手を伸ばして髪に触れると、栗色の髪が柔らかく絡みついてくる。ロックオンは、僕

の舌を吸ったり、絡めたりして弄ぶ。カスタードの甘い匂いが口から鼻に抜ける。吐く息までが甘い。

 くちゅり、と互いの舌が鳴る。

 ぬるぬるして熱い舌。べたべたして甘い唇。柔らかい髪。気持ちいい。ロックオンのキスは気持ちい

い。滑った感触と一緒に、快感が口だけでなく背中から腰のあたりまで降りてくる。気がつけば、ロッ

クオンの指先が、僕の背から腰へと伸びている。

「ん、んん。んぅ、うふ」

 ロックオンの唇の甘さが、僕を溶かす。滑った舌に感じて、腰の後ろに熱が溜まっていく。指先の触

れるところが、じりじりする。

 だんだん、苦しくなる。息も。僕自身も。

「ん。う。うふぅ」

 ピチャリ、と音をさせて、唇が離れる。ロックオンは、僕の口の周りを舐めた。ぬるっとして温か

く、少しざらついている。赤い舌を伸ばして、溢れた唾液とプリンの欠片を舐め取る。猫か犬のように

舐める。動物的な仕草が生々しい。

 ふだんのきれいで冷静な彼とは違う、動物的な肉欲的な顔。こんな彼を他の人は見たことがあるのだ

ろうか。ロックオンは、人当たりが良くて、頼れる兄貴だというのが表向きの評価だけど、ほんとうは

「ニヒル野郎」なんだと、ハレルヤは言う。厭世家で獣だと。彼が獣なら、僕はなんだろう。

 僕の上唇、下唇と順番にはいずった舌が頬を舐める。ロックオンの唾液とカスタードの甘い匂いに噎

せる。

「は・・・あぁ。ロックオン。・・・あ、まい」

「何が? プリン?」

 耳元に、湿った息と、濡れた舌。ゾロリと音がして、背筋が震えた。ロックオンは、僕の孔と言う孔

を舐めたいみたいだ。そこから、僕の中に入ろうとする。ロックオンは、僕の耳の中を舐めながら、僕

のベルトを外す。

「あ、ううん。・・・だめだよ」

 このまま腕に絡めとられてしまいたい気がするけど、今はまだだめだ。向かいの部屋にティエリアが

いるし、ハレルヤが僕を探してる。なんだかんだ言っても、ハレルヤを抑えられるのは、僕だけだ。何

か起こったらいつでも、ここから出られるようにしなくちゃけない。

「あんっ」

 緩んだウエストから入ってきた大きな掌が僕の尻を掴んだ。強い指先で尻たぶを、ぐにぐにされる。

 どうして彼は、そんなことをするんだろう。それだけのことに僕は声をあげてしまう。はしたない

声。僕は小さく首を振る。甘いのはプリンだけじゃない。

 ふふっと、低い笑い声。楽しんでる声。ロックオンは、僕の頬に顔を摺り寄せるようにする。耳朶に

かかる息がくすぐったい。髪を掬いあげるようにして耳朶を出し、唇で、弄ぶ。

「何が? 何が、甘いの? アレルヤ。プリン、もっと食べる?」

「いいえ。そうじゃなく・・・」

 知ってるくせに。狡い顔は、今は見えない。

 顎を捉えられ、口付けが落ちてくる。白い顔。長い睫毛。

「ロックオン」

 口元に柔らかいものが触れる。啄ばむようにキスをして、それから、深く求められた。舌の動きにあ

わせて、尻の肉を揉んでいた指が、さらに奥に侵攻しようとする。

「ん、んふ、ぅく」

 くすぐったくて、身を捩って逃れようとするのに、長い腕からみついてそれを許してはくれない。強

く束縛されているわけではないのに、抜け出せない。翡翠の瞳をした獣に押さえこまれた草食動物のよ

うに僕は無抵抗に眼を瞑る。

「かわいい、アレルヤ」

 呪文のように囁かれて、僕はどうしようもなく、ときめいてる。これから、なにが起こるのか。どう

されるのか。僕は、僕の身体は知っている。だんだん、身体が熱くなる。ロックオンの腕に抱かれる

と、ぼくはいつもぐずぐずになってしまう。食われる怖れが快感になって僕を痺れさせる。

 ロックオンは、キスを解くと、後ろの指はそのままに、耳の裏、項へと唇をすべらせ、右手の指を僕

の唇に這わせると、そっと滑りこませた。

 細い指。強い指先。強引で、優しく、時に淫らな指。

「噛んだら、だめだぜ」

 そんなこと、わかってる。舌の上にのせて、つつむようにして、啜る。くちゅっ、と音がした。

 ソファの上で立て膝をして、身体をすりよせあっている。午後の陽射しが、深くはいり込んでい

て、室内は明るい。彼の視線から隠れることはできない。着ている物を剥ぐように、彼は僕を剥き出

しにする。

 指が、僕の口の中を探る。上あごを撫で、舌を柔らかく揉むようにされると、美味しいっていうみた

いに唾液があふれてくる。じゅる。じゅぶ。と。ロックオンは、僕に指を咥えさせたまま、僕の首筋を

舐めている。耳の後ろに唇をあてる。もう片方の手は、シャツの下に潜り込み、背中を弄っている。

背骨をひとつひとつか数えるように、指が這い降りて行く。

「背中、すべすべだ。こないだ、俺、痕つけたの知ってた? 肩甲骨の下」
 
 んふ。と、僕は頷く。

「ハレルヤに見つかった?」

 あう。ロックオンの手が、僕のお尻を掴む。乱暴に掴む。

 僕は、コクコクと頭を振る。楽しそうにロックオンは笑い、僕の口から濡れた指を引き抜くと、指の

腹で、唇をぬるりと撫でた。

 ロックオンの綺麗な指が、唾液にまみれて、つやつやと濡れている。僕は、溢れそうな唾液を呑み込

みながら喘ぐように息をした。

「ハレルヤが、怒って・・・」

 言いかけた時、ロックオンの携帯が鳴った。濡れていない方の手でとりあげる。僕をソファに押し倒

すと、僕の腿を膝で押さえつけた。僕は、手にしたプリンの容器を落とさないようにあわてて捧げ持っ

た。




 チチチ、と、長い指が僕のジーンズのファスナーを降ろす。左手に携帯。右手で僕。 

「俺だ」

『よう、ロックオン。アレルヤの馬鹿知らねえか』

 ロックオンが、スピーカーをオンにする。離れていても、すぐにハレルヤと分かるほど大きな声。白

い手が前をはだけ、僕の唾液で濡れた指が、忍び込んできて、下着の上から僕に触れた。

 びくって、する。

「馬鹿ってお前な。ハレルヤ」

『ハレルヤ様だ。様つけろ。・・・あいつを見つけたら言ってくれ。プリン食うなって』

「プリン?」

 顔を見合わせた。

『ああ。あの馬鹿、俺の機嫌とろうとして、プリン買ってきたんだ』

「へえ」

 キスして、感じてたから、もう、大きくなってる。下着の上から、はっきりとわかるくらい。こんも

りと膨らんでいるところを、押される。堅い指先で。ふにっと。

 ひあぅっ。って、とんでもない声が出そうなのを、スプーンで押さえた。スプーンの丸い輪郭を舌に

押し付ける。

『それが、不良品だった。食ったら腹壊すってニュースでやってる』

「不良品ねえ。で、お前は食ったのか」

『ああ。半分な。アレルヤのやつ、二個買って来たくせに、一個もってトンズらしやがった』

「なるほど」

 ハレルヤと話しながら、ロックオンは僕を弄ぶ。人差し指と中指で、ゆっくりと僕を扱く。

『どこぞで、隠れて食ってるんだろうが、腹壊すって言ってくれ』

 爪は綺麗に切ってあって、桜色。細くて長い指。強い指先。僕を触れるか触れないかのように撫でた

り、ギュッとつかんだり、裏筋に沿うように爪を食いこませたり。

 血が集まってくる。指先をもっと感じたくて、首をもたげる。先っぽが、じゅく、じゅくする。薄い

布地を押し上げて、自己主張。

 気持いい。もっとして。もっと強く。もっと。もっと。直接触ってくれ。

「わかった。それで、お前、アレルヤ探してんのか」

『おうよ』

 翡翠の瞳が僕を見ている。僕は必死に見返す。口の端が少し上がる。わかってるよ、っていうみたい

に。

 指先が、スキマから、僕を取り出す。さやえんどうの鞘を割るみたいに。入ってきて、直接僕に触れ

た。ぶるっと震えた。指はそんなに熱くない。ロックオンは平静だ。いつも平静。

「そうかい。・・・アレルヤに会ったら言っとくよ」

 ぴょこんとブリーフから生えた僕は、先端に滴を溜めてる。長い指が、からみついてくる。ぬるりと。

 きもち、いい。その濡れたので、もっとして。

 滴があふれてロックオンの指を濡らす。昼間の光に僕は濡れて、むき出しにされてる。

 ロックオンとハレルヤの声が、僕の欲望を覗いてるみたい。

 たまらない。

 スプーンの丸い輪郭を舐めていると、唾液が溢れてくる。金属の味がする。ほんとうに舐めたいもの

を思い浮かべて、僕はゴクリと咽喉を鳴らす。

 ハレルヤは、ちょっと沈黙すると、声のトーンを落とした。

『それと・・・ロックオン。行儀の悪い犬がいるらしい。勝手に俺のもんに、マーキングすんなって言

っとけ』

 張り出したところをくいってされて、指の腹で、割れ目を押さえられたら、口がぱくってする。とろ

りと、だらしなく、涎をたらす。

「お前さんの、物ね。・・・了解」

 ロックオンはパタっと、携帯を閉じた。それを後ろに投げると、僕を引き起こす。ロックオンの膝の

下にジーンズを置いてきぼりにして、僕は身体を起こす。

 きれいな顔が近い。息がかかるくらい。

 甘い、香り。この匂い、忘れられなくなってしまいそう。

「ロックオン・・・。ごめんなさい。プリン、食べちゃいましたね。具合悪くなったらどうしよう」

「一口だしな。大丈夫だろ。アレルヤ、心配?」

「うん」

 キス。キスがしたいって咽喉が鳴る。

「俺が? ハレルヤが?」

 翡翠の瞳が下を見る。

「俺が、ハレルヤと話してるの聞いて、こんなにしてるのか」

 やらしい奴。耳元で、囁かれる。

 だって、しかたない。誰のせいだよ。誰だってなるでしょ。触られたら。

 言えない台詞を閉じ込めて、唇を、肩に押し付ける。ロックオンのシャツは乾いている。

 涎付けないようにしなくちゃ。

 グイッと僕はシャツを胸までまくられる。丸まったシャツが、ちょうど乳首の上。それ、ちょっと微

妙。

 僕の事情なんてお構いなしに、ロックオンは、僕を引き寄せる。涎を垂らした僕はロックオンの腹に

ぶつかる。

 汚れちゃう。だから、シャツ脱いでくれない? 白い肌が見たい、とは言えない。

「うう」

「見せてみ」

 指先が、背を撫でる。さっきより、熱く感じる。背中の真ん中をきゅっと押す。そこは、赤い痕があ

るはず。この間、ロックオンが、吸ったところ。僕には見えなくて、でも、目立つところ。

「アレルヤ。・・・増えてる。一個、増えてる」

 トントンって、指先で叩かれる。弁解を催促するみたいに。

 言うなら今だよ。

 血が冷えてく。僕自身は、自己主張を続ける自信を失う。乳首が疼く。

 白い手が、指先が僕とロックオンの間に入ってきて、あばら骨のあたりで止まる。上に行こうか、下

に行こうか迷うみたいに。

 彼の親指の腹を感じて、

 僕、なででほし!

 僕、おしてほし!

 僕の身体は、勝手なことを言う。奥の方までが僕もって、ひくつく。

 恥ずかしい。

 僕は、この指のためなら、なんでも言ってしまうだろう。言ったらきっと、僕は嫌われる。怒られ

る。それは嫌だ。でも、このままなのも嫌。

 いやいやいや。まだまだまだ。もっと、ほしい。

「ハレルヤが。・・・ハレルヤが怒って」

「つけたのか」

 ロックオンは僕の手からプリンとスプーンを取るとテーブルに置き、正面から僕を見た。肩を引き寄

せられた。

 キス。柔らかい唇。優しい舌。待っていたものを与えられて、僕は咽喉を鳴らす。

親指が、小さな突起をぐりぐりする。ご褒美に、背筋が震える。唇から背中を通ってお尻まで、びりび

りする。僕の手は彼の肩を掴んでいる。

 口の中を舐められて、緩く吸われて。僕は同じことをしようとする。

「お前さんは、ハレルヤのものなの?」

「半分は・・・」

「半分なんだ。残りは?」
 
 言ってみろよ。

 そそのかすように、唇が、瞼に触れる。

 俺の欲しい言葉をくれたら、ご褒美やるからさ。

 彼のぶら下げるエサに僕は、たやすく食らいつく。理性なんて、どこへやら。

「ロックオン。・・・ハレルヤは僕を独占したがるんだ。僕たち、兄弟なのに」

 眼を閉じたら、ロックオンは見えない。左手が、僕に触れる。勢いをなくしかけた憐れな僕に。

「お前のこと、好きなんだよ。俺もハレルヤも。それを、相手に見せつけようとする」

 長い指に包まれて、扱かれる。

 ごりごり、ずりずり。先端の割れ目。そんなところに爪を立てたら痛い。イタイ、けど、きもちい

い。

 ぬるりとして震える。僕の零すもので彼の手が汚れる。恥ずかしい音がする。

 いいよ。もっとして。

 僕は、欲に塗れてどんどん醜くなっていく。赤黒く、のたうって、捌け口を求める。甘やかされ

て、僕は言っていいことと悪いことの区別を見失う。

「ロックオンは、ハレルヤが嫌い? ハレルヤが、ライルと付き合ってるから?」

「はっ。なにそれ」

 同属嫌悪。

 ライルはロックオンの双子の弟で、ハレルヤの恋人。それは僕がロックオンと付き合うより前から。

ロックオンが休学している少しの間に、ふたりは付き合うようになった。ロックオンは、ライルのこと

をすごく心配してる。無軌道なハレルヤと一緒なのをいつも気にしてる。

 ハレルヤは、そんな彼のことを、「あいつは俺にライルを取られた腹いせに、お前と付き合ってるん

だぜ」と言う。

「ちがうよ」そう言う僕の声はいつも、少し小さい。

 ロックオンの口元が歪む。そんなところだけ見てしまう、どうしようもない僕。

「ロックオン?」

 濡れた指先が、強引に蕾を開こうとする。僕の先っぽから溢れたもので、濡れたそこにさらに滑りを

加えて。

 つぷ、と。ぐりぐり、と。

 キスは優しさを忘れて、乱暴に粘膜を探る熱い舌の蹂躙。

 かき回されているのは、身体なのか、脳みそなのか。

「んあ。ふぅ。・・・あぁ・・・ん」

 舌を絡めて、指を入れられて、扱かれて。

 ひどい、恥ずかしい格好になってるはず。体中の血がぐるぐるする。腰の後ろが熱くなる。びくつい

て動きたいのに動けない。

「アレルヤは、気にならないのか? ハレルヤとライルが、一緒なの。ハレルヤのプリン、半分食べた

の、ライルかもよ」

 僕の敏感なところに爪を立てながら、そんなこと言わないで。こぽりと僕はあふれてしまう。

「出て行きたい気持ちは、くすぶってるけど、ね。・・・僕は、あなたといたい。ロックオン」

 ロックオンが身体を離して、僕の肩を掴む。いつの間にか白い頬が上気している。濡れた赤い舌

が、ぺろりと、唇を舐めた。

「おりこうさん。いい子だ」

 そう言って、シャツを脱いだ。白い肌。項の綺麗なライン。胸の飾り。引き締まった腹。

「アレルヤがエロい顔するから」

 手をとって、触れさせられたそこは、固くなっていて。

「おっきくして」なんて、笑う顔がきれいだ。

 掴み出された彼は、もう、そこそこ大きくなっている。右手を伸ばし、指を添えると、ずくりと反応

する。彼の指を咥えた僕の奥がひくっとする。

 ロックオンは、空いた方の手を伸ばし、指を絡め、握りしめると、僕の手にキスをする。それだけで、

また、僕ははしたなく反応する。

 自然な仕草で、僕の身体から服を取り去ると、白い身体がおおいかぶさってくる。背に腕を回し、

その熱を受け止めて、僕は目を閉じる。

 腹いせでもいいよ。今、感じてる熱は本当だから。

「お前の肌、気持ちいいな。すべすべして、あっちいの」

「気持ちいい、の?」

「ああ。だから、さわってて、俺のに。可愛がってくれよ」

 耳元で、そう言われて、僕は赤くなる。

「ロックオン、具合悪くないの」

 腕を上げさせられて、腋の下を舐められる。さっき、プリン食べてた舌が、僕の肌を舐めてる。ざら

ついた感触に、また、腰に熱が溜まる。

「大丈夫だよ。・・・まあ、健やかなる時も、病める時もって言うし」

 ロックオンは、僕の胸に話しかけている。

「え?」

「なんでも、ねえよ」

 そう言って、歯を立てた。



                                       2010/7/14  了





【元ネタはこれです】
ツイッターのbotで配信されてきた台詞を使ってみました。

H  アレルヤ! アレルヤァァァ。
L  同属嫌悪ってやつかい? なんでもねーよ
A  出て行きたい気持ちはくすぶってるけどね。






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